初めまして。
満月うさぎ社です。
沖縄の奇才・知念満二の作品を世に出すために生まれた
小さな手づくり出版社です。どうぞよろしくお願いします。noteはじめました!
知念満二の新作短編が毎週読める!
オープニング作品は「海と僕をつなぐ板」慎ましい人々
知念満二短編集1
知念満二短編集1 慎ましい人々
水城ゆう主宰の身体文章塾にて毎回与えられる「テーマ」に刺激されて湧き出る
ものがたりは、タブーも期待も自然の法則さえもお構いなし。
作家・知念満二の産声ともいえる初期の作品「幼児虐待」「啓蟄」「悲しみ・貢献・日本海」「慎ましい人々」「ズボンの染み」「ヘンタイマヨラー」「役割」「問題は冷蔵庫」「判別」「反乱」「縄文式土器はじめました」「ヒューマンチェス」「筒状の肉」「虫の知らせ」「これも弁当」「二度目の人生」「至れり尽くせり」「抑制」「シン・サトラレ」「たちつてと」「お付き合い」「使用例」「肛門」「指先の恐怖」の24編が収められている、読み応えたっぷりの一冊。*全ての作品はフィクションであり、実在の人物、団体、地名とは一切関係ありません。
試し読み
2作品の導入部分をお読みいただけます。
続きが気になった方は、どうぞ本をお手元にとりよせてじっくりとお楽しみください。
「問題は冷蔵庫」
「それではただ今から我が家の引っ越し作戦の全貌を発表するので横やりを入れず、静粛に聞いて頂きたい」
康が立ち上がっていつもより少し大きな声で言っても二人の子供たちは畳に寝そべって漫画を読んでいる。
「引っ越しは二日後の土日。この日程で全て完了する予定だ。しかしこの作戦は簡単ではない。特に最終日の日曜はかなりの困難が予想され、実行には厳しく高いハードルがあると思われるのでみんなで力を合わせて乗り切っていこう。この引っ越しのテーマは天使のように大胆に、悪魔のように細心にだ」
「なんで引っ越しにハードルがあんだよ」
高一の康広が漫画から視線を外さないままつぶやいた。
「それ。それを横やりと言うんだ。それを言うなら、どんなハードルですか?と質問形式でお願いしたい」
二人は全く関心を示さず漫画を読んでいるので康はそのまま続ける。
「二人とも知っているようにお母さんは土日も仕事が忙しいので引っ越しは我々三人で行う。そしてこれも二人とも知っているように、お父さんは運転免許を持っていないので引っ越しは山の手線を利用する」
二人は漫画を放り投げて飛び起きた。
「ふざけんなよ、なに寝ぼけたこと言ってんだよ」
「そうよ、そうよ。バカなこと言わないでお父さん。山の手線で引っ越しなんて、友達に見られたら恥ずかしくて二度と学校に行けなくなるわよ」
中二の海はすでに泣き顔だ。
「海、お前に恥をかかせることなんてしないよ。安心しなさい。お前にやってもらうことは持てる範囲の物をバッグに詰めて運んでもらうだけだよ。それはただ荷物を持って電車に乗るだけだから問題ないでしょ。お父さんとお兄ちゃんとの三人でカバンや袋に荷物を入れて山の手線に乗るだけだからね。土曜日は二十往復は必要かな?大変なのは日曜の午後からだけど、それはお父さんとお兄ちゃんでやるから海はタイミングを見て、合図してくれたら良いんだよ」
半泣きになっていた海が少しだけ笑った。
「ちょっと待てよ親父。日曜の午後が大変って何があんだよ。キッチリ説明してくれよ」
「康広、お前そんなことも分からないのか。オレの子とは思えない頭の悪さだな。廻りを見てみろ。これを山の手線で運ぶんだぞ、何が大変なことか想像出来ないのか?」
狭い部屋の中で演説でもするかのように人差し指を伸ばし、腕を水平にぐるっと部屋を見回す父を見て康広は
「母さんだけに仕事をさせて自分は毎日近所の焼き物屋で土をいじっているだけのくせして何、言ってやがる」
「母さんはそれで良いと言ってくれているんだ。いいから部屋を見てみなさい。何が大変と思う?」
海がおそるおそる二人の会話に入ってきた。
「お父さん、もしかしてあの、あの、冷蔵庫も山の手線で運ぶの?」
「ピンポ〜ン。海ちゃん大正解〜」
「ふざけんな〜、親父〜」
・・・・・・物語はここからすんごい展開になっていきます。続きを是非とも読んでください・・・・・・
抑制
「行き過ぎた新商品の開発は貴重な地球の資源を無駄遣いするだけである。未来の地球人に豊かな資源を残す為に政府が立ち上げた部局がこの、資源保護の為の商品開発抑制局である。世界に先駆けたこの行動はすぐに世界に影響を与えるであろう。この任務に私は身震いする思いである」
初代の局長に任命された近藤は二十数名の局員たちを前に、この局の意義と自身の熱い思いを語った。
「それでは半年間の立ち上げ準備期間に諸君がまとめた案を発表してもらおう」
副局長の山木が手を上げ立ち上がった。
「端的に発表します。まず直ちに指導が必要なのはゴルフ業界と釣り道具業界です」
近藤は、釣り道具業界と聞いて驚いた。全く知識がなかったのだ。
「ゴルフ業界ほど意味のない商品を販売している業界はありません。地面に置いてある球を打つだけなのに、ドライバー、フェアウェイウッド、アイアン、パターなど十四種類を販売しているのですから全くひどいものです。ドライバーとパターの二本で充分です。業界から文句を言ってきたら野球を見習いたまえと指導しましょう。止まっている球を打つゴルフと大違いで時速百五十キロ前後で飛んでくる球を打つのにバット一本で対処するのですから。十四種類も販売するなんて資源の無駄遣いにもほどがあります。徹底的に指導しましょう。次に釣り道具の業界です」
おずおずと一人の男が手をあげた。
「なんだね、川谷君」
「あの〜、十四種類もあるのは球が置かれた地形とパットまでの距離を鑑みて、使用するクラブをチョイスするものと思われまして……」
立ち上がって発表しておきながら徐々に座っている。
「だからなんだね? 正当性があるというのかね?」
「いえ、なんでもありません」
・・・・・・押され気味の川谷が自ら提案した開発抑制の対象にするべき商品とは? そして、その理由とは?……続きは書籍でゆっくりとごらんください。・・・・・・
つづきは、ご自分の本でお楽しみください
「知念満二短編集1 慎ましい人々」24編のSFショートショート
読者の声
「お、おもしろすぎです!
スゴいなー、 大好きですよ、こういうの!
笑いと勇気のような物を貰った気分です。
やっぱこれこそ知念さんですよ! 天才⁈」
- ハシクラ・ヨウイチ
「慎ましい人々」読みましたo(^-^)o
まるで抽象画を見ているような不思議な感覚でしたo(^-^)o
作家 知念満二o(^-^)o誕生ですねo(^-^)o」
- 裏千家正教授 中島宗津
「去年沖縄でゲットした、ジャングルカー(屋根にガジュマル生えてる車)の知念満二さんの小説「七十一年目の帰郷」を咽び泣きながら読んで、次回作を楽しみに待っておりましたら、出ました。
「慎ましい人々」
こちら短編集で、毎話毎話、「ぶふっw」…となります。
この長雨のお供に丁度良いです。
私は米を炊く間とか、子供が寝付いた時などに1話ずつ読んでいます。」
- Mariko KozakiさんFBより(許可を得て転載)
「日頃の風情から想像ももできない知念二さんのショートショート、悪魔的知識に溢れた話。
読むと爽快感はなく苦しい。全編をYouTube にしてほしい!」
- 中嶋 正夫さんFBより
「表紙のヘッケルの進化の系統樹、とても良いと思いました。
一見難しそうな本を手に取って読んでいる自分が他者から見ると頭が良さそうに見えるのではないかと言う優越感と、くだらない内容との葛藤!笑
読んだ時間を返せとは言いません。
最後まで笑ったり考えたりと気が抜けない内容でした。 あのくだらない内容にぎゅーっと吸い込まれるように読めたのは、知念さんの魅力にまんまとやられたと言うことだ。。。 知念ワールド! 深い!
そして「ヘンタイマヨラー」 ゆー君とすーちゃんの話し方が橋本悠と僕そのままと言う、知念さんの繊細な観察力! どちらかと言うとヘンタイなのは知念さんの方だなぁと深く深く感心しております。」
- 富山の釣り師、堀将
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知念満二短編集1 慎ましい人々
¥ 1,000
知念満二の初期の短編24編が収められた短編集。
どこにでもある、なんでもないような状況で、なんの変哲も無い登場人物たちが織りなす異次元ワールド。お疲れ気味の脳みそのストレッチ、マッサージ効果があるとか、ないとか。
四六判 166ページ
ISBN 978-4-909557-01-8
C0093 ¥1000E
満月うさぎ社
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Chinen Mitsuji
1957年沖縄県那覇市生まれ。小学生の頃、近所の裏山で遊んでいたとき石の祠(ほこら)のようなものをみつけ、中に沖縄戦での戦死者と思われる人間の大腿骨が地面に突き立てられていたのを目撃し、強烈な印象を受ける。
1996年、神の島・久高島で世界的なエレクトリック・トランぺッター近藤等則(としのり)氏と嘉手苅林昌(かでかるりんしょう)氏のコンサートを、兄と共にプロデュースする。それまで誰も許可されなかった神の島で、初めてのコンサートだった。その時のライブ音源に、林昌氏の海外での未発表音源を収録し2005年にCD「沖縄の魂の行方」としてリリースした。
ダライ・ラマ14世が提唱した「世界聖なる音楽祭・広島2001」の総合プロデューサー近藤等則氏のもと広島事務局長を務める。広島の数十人のボランティアスタッフと共に世界中から二百人を越えるミュージシャンを呼び、厳島(いつくしま)神社の鳥居前の海上にステージを組み、実現させた。
2007年、帰沖。あまりの暑さに「車上緑化計画」を始める。一時中断後「車上花畑計画」として再開するうちにガジュマルやオオタニワタリなどが自生し、動くジャングルとなる。2015年にはジャングルカー日本縦断ツアーを敢行し多くの子どもたちの笑顔に出会う。
2018年より首里城下の谷間の「極楽ハウス」に居を移し、パーマカルチャーの影響も受けつつ、ガーデンづくりと晴耕雨読ならぬ晴耕雨筆の日々を送っている。推薦&激励のことば
水城 ゆう
「知念満二は…身体文章塾に参加して一年あまり、しかしすでに膨大な作品群を書き上げている。そのどれもがおそろしいほどに独自性を持っている。文体、ストーリー、エネルギー、どれを取っても類を見ない。…まずは荒削りな作品ではあるが、その勢いの一端を楽しんでもらいたい。」2017年刊行「Hiyomeki」より
「ばかばかしいとしかいいようのない話。いい歳をしたおっさんが日がな一日、頭のなかでばかばかしい妄想をふくらませ、夜になったらコンピューターに向かってせっせと打ち込んでこれを書いたのかと思うと、それだけで笑える。」
「しかしここにはあふれんばかりの、そして無為純粋のサービス精神がある。人を笑わせることだけにこれほどのエネルギーを使える人間というのは、それだけで才能だと言える。」
瀬野 和広
月の使者
昔、彼とは同じテーマの夢を見ていた。しかし、同じものを視ているはずなのに、見えているものがまるで違う。形だけで評価するなら、こみ上げる笑いを抑えられない。つまり、稚拙と言ったらそこで話は終わってしまう。だけどそこには姿形の視覚だけでは割り切れないカタチが潜んでいた。彼には「最高の」が数知れずあったし、「天才」もあらゆる場面で沢山いた。今、その知覚的カタチの中身をやっと見せられた気分。なんともったいぶっていたことか。それが一編ごとすべてに、最高のと、天才の説明がなされているではないか。率直に素晴らしい。夢の続きで言うなら、ちゃんと物を語れる彼に勝るスペースデザイナーは居ない。だから、全編舞台劇にしたら面白そう。唐突な発想と、どんどん出てくるストーリーの現実的妄想録。妄想と楽しく遊ぶことこそが彼の人生。知らないはずの世界も、とうとうと語るあの知識も妄想から教わっているのか。興味が夢を誘い、妄想の中で知識のカタチになっていく。天才ではないか!君が最高だよ、知念。
この一冊は、2016年の妄想録だそうだ。だとしたら4巻5巻と今後出揃うはず。この上ない楽しみがひとつ増えた。
彼はきっと月からの使者!ただ満月の日に降り立ったところが我々の前だったとすれば、なんと申し訳なかった事か。。。
せのかずひろ / 建築家
知念ワールドへようこそ
知念満二のこれまでの活動を紹介します
アニメーション「ウチ、地獄から出たい」
橋倉洋一&野々宮卯妙とのコラボ企画
僕が書いた物語に、友人の橋倉洋一が「紙芝居風な絵を描いて動画にしてみました」と、この動画を送ってくれました。突然のことでしたので驚いて見ているうちに「朗読があるとなお良いかも!」と、現代朗読協会の野々宮卯妙さんにお願いしました。 突発的に出来上がった三人のハーモニーをお楽しみください。
2015年8月 ジャングルカーで日本縦断
2015年8月21日 QAB(琉球朝日放送)より
2015年8月1日から30日までの1ヶ月間で、沖縄からフェリーで熊本に入り、ほぼ一般道のみを走行して、秋田県男鹿半島まで各地を訪ねた日本縦断ツアーの様子を琉球朝日放送が取材して放送してくれました。全走行距離5034km
ジャングルカーよ!永遠なれ
「知れば知るほどラビリンス」をテーマに、沖縄のローカル情報を、沖縄在住ライターが紹介する沖縄情報ポータルサイトDEE Okinawaでは、車上花畑のころから何度か記事に取り上げていただきました。
2018年に引退する時の記事はこちらから。
(写真は新オーナーと現在のジャングルカー。古宇利島のハートロック入口駐車場で会えます。)
知念満二プロデュースCD
1996年10月、沖縄の最高の聖地で「神の島・久高島ミュージックキャンプ」が行われた。その聖地でのライブの模様をメインに、さらに翌年同じく久高島のカベールの浜で演奏( NHK、BS戦争童話集)、翌々年の重要文化財の中村家での演奏(日本未公開ドイツ映画)を収録。また、林昌氏の貴重な生の語りをはじめ、未発表曲「戦を恨む母」「恋しアルゼンチン」も収録。また、ブックレットでは28ページに及ぶ豊富な写真・歌詞・対訳・解説・年譜が初心者にもわかりやすく、さらに地元沖縄の研究者や島唄フリークにも応える内容となっています。島唄の神様、人生最後の絶唱を感動の 49分34秒に凝縮しました。
こちらのYoutubeからCDの一部を聞くことができます。
つらね〜かいされ〜
恋しアルゼンチン既刊「七十一年目の帰郷」
表題作は、沖縄のローカルラジオ局RBCiラジオ主催 RBC FMファンタジー大賞に応募し、ファイナル十作品に残った27ページの中編。
日本国内で唯一壮絶な戦場となった沖縄。それから71年の時を経て、起きだした魂たちは、何を記憶し、何を求めて、モノレール駅ホームに現れたのか。それぞれの家族史や意識の底に眠っていた想いを揺さぶられる職員たちに、圧倒的な命の尊厳を体感させた人間の魂の本質とは……。死者の話であるにもかかわらず、読後いのちの輝きやあたたかさを感じさせる、不思議で心に響くものがたり。
極楽ハウス&ガーデン ブログ
祝!初投稿!! 月に一つは投稿したいなぁ。
October 7, 2020お問い合わせ・ご感想
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